高齢者とのコミュニケーションで大切なことは?

エピソードを引き出す質問術

介護現場でのコミュニケーションにおいて、会話がなかなか続かず悩んでいる方は多いのではないでしょうか。特に、お食事は美味しかったですか、とお聞きして、はい、という一言で終わってしまうような場面です。これは、答えが二択に限定される質問ばかりを投げかけていることが原因かもしれません。利用者の方の豊かな人生経験や、心の奥にある想いを聞き出すためには、少しの工夫で会話を広げる質問の技術が必要になります。

会話を弾ませるコツは、相手が自由に答えられるような問いかけを選ぶことです。例えば、お食事は美味しかったですか、と聞く代わりに、今日のおかずの中で一番お好きなものは何でしたか、と尋ねてみてください。すると、焼き魚が脂が乗っていてね、といった具体的な返答が返ってきやすくなります。そこから、昔はよくお魚を釣られたのですか、といったように、一つの答えから次のエピソードへと自然に会話の枝葉を広げることができるのです。

具体的なエピソードを引き出すためには、当時の情景や感情を思い出すような質問も効果的です。例えば、昔のご職業について伺う際も、お仕事は楽しかったですか、ではなく、お仕事をされていた時、一番やりがいを感じたのはどんな瞬間でしたか、と聞いてみます。当時の苦労話や誇らしかった思い出など、その方ならではの生き生きとしたお話が聞けるはずです。相手が話し始めたら、遮らずにゆっくりと頷きながら耳を傾けることで、利用者の方は大切にされているという安心感を抱き、より心を開いてくださいます。

こうしたコミュニケーションの積み重ねは、単なる世間話以上の価値を持っています。特別な話題を用意する必要はありません。目の前の利用者の方に心からの興味を持ち、どうして、どのように、といった開かれた質問を優しく投げかけてみてください。あなたの温かな問いかけが、誰にも真似できないその方だけの素晴らしい物語を引き出す鍵となるのです。